視覚障がい者のホーム転落による死亡事故が後を絶たず、駅のホームドア設置が急がれるところですが、2つの朗報が入りました。
1つ目は、ロボット盲導犬とも言える「AIスーツケース」です。写真のようなスタイルですが、位置情報を使って視覚障がい者を目的地まで安全に誘導し、さらに周囲とのコミュニケーションも支援してくれるのです。
2つ目は、政府の「バリアフリー化運賃」です。これは、ホームドアなどバリアフリー化の費用を運賃に上乗せする、つまり利用客に一部負担をお願いして実現を早めようという制度です。
ホームドアは、子ども連れや高齢者も含め、全ての人にメリットがある設備ですから、鉄道事業者と利用客に負担を強いるだけではなく、潤沢にある道路財源の一部を鉄道インフラに回すなどして進めてほしいものです。
伊藤嘉章
駅のホームから転落し電車にはねられて死亡したのは、視覚障がい者の男性でした。
大都市の駅には「ホームドア」という設備があります。
ホーム上での人と列車の接触や、今回のような線路上への転落による人身事故を防ぐために設置されています。
ただし全部の駅ではなく、毎年増えてはいるものの充分な数ではありません。
そうした中で、今回の地下鉄東陽町駅は、ホームドアの工事は完了していたが稼働前で防げなかったという、なんともつらい結末でした。
視覚障がい者の転落による死亡事故は、今年の東京23区だけでも、JR日暮里駅(1月)、JR阿佐ケ谷駅(7月)、そして今回の地下鉄東陽町駅(11月)と続いているのです。
すべての駅にホームドア設置はずいぶん先の話になるだろうし、盲導犬はというと、全国で視覚障がい者30万人に対し900頭しか稼働できていません。
せめて駅員や乗客による声掛けなどのサポートで、1件でも防ぐことができればと願います。
伊藤嘉章
遺族の大きな悲嘆に触れ、コンシェルジェを起業する動機となったのが、2005年に起こったJR福知山線脱線事故です。
思えば、40年前に所属していた鉄道研究会での4年間が、移動手段としての鉄道の魅力を知り、関心を深めるきっかけになったのでしょうか。
私は事故当時、2年足らずの期間ですが、香典返しの会社で外交セールスマンでした。
翌年の起業につながる仕事でしたが、故人はこの時すでに75歳以上の高齢者ばかりで、遺族の悲嘆に直面する機会はほとんどありませんでした。
しかし事故・災害による死は悲嘆そのものであり、107人が犠牲になったこのJR福知山線以前にも大きな鉄道・航空機事故は何件もあり、中でも日航ジャンボ機墜落事故(1985年)は520人が亡くなっているのです。
JR福知山線事故以来、私は人が亡くなるニュースを聞き流すことができなくなりました。そして事故から7年後の2012年12月に、初めて尼崎市の事故現場へ慰霊に行ってきました。
今年は15年目の慰霊式がコロナウイルスの感染拡大で中止になったそうですが、鉄道・航空機の安全を祈り続けたいと思います。
伊藤嘉章